地球環境保全とリサイクルは同義語といってもいいほどの社会認識が深まってきました。私どもはその一角である古紙リサイクルを生業としてきました。何故リサイクルしなければならないかと考えるよりもむしろ、もともとはいかに安価な製紙原料で紙を作るかという命題が戦前からの製紙工場にあり、その要請に応えるべく古紙を集める努力をしてきた、と申し上げる方が本当のところでした。そしてついに平成15年には実に製紙原料に占める古紙の割合は60%を越えました。パルプの使用比率が反対に下がりました。日本の製紙業界の技術革新が進んだお蔭です。コスト面で古紙消費の拡大を図ってきたわけです。そこへこの10年あるいは20年前から資源リサイクルの機運が高まり、私どもの業界に必要以上の古紙が集まり、長い年月、豊作貧乏状態でした。平成13年ごろより、中国の経済発展のお蔭で、古紙が中国へ本格的に輸出されるようになりました。鉄スクラップと同じような流れです。国の基幹産業である製鉄からはじまり、製紙業もものすごいスピードで拡大し、平成13年には紙、板紙、ダンボール原紙等の総生産量で日本を抜きました。中国はとうとう世界第2位に踊りでたわけです。輸出に活路を得た日本の私ども古紙業界は集まったら集まっただけ販売できるという業種になりました。他力本願ですが。
製紙業界の技術革新と輸出という大きなうねりのおかげで日本の古紙はごみにならずにすんでいます。ただし、古紙をごみにしない仕組みを各自治体が持っていればという条件が必要です。近畿圏では、大阪市と京都市にその仕組みがあるようでありません。いろいろないきさつがあって現在があると思いますが、この2政令都市では相当な量の紙(紙ごみ)を焼却炉で燃やしています。両市には地球環境保全を啓蒙し、その計画をたてるために膨大な時間と人材を投入して取り組んでおられますが、紙ごみに関してはほとんど経済的手法をなさずにこの10年過ごしておられます。反対に焼却炉の更新と改造に力を注いでおられます。確かにCO2は目に見えませんし、ダイオキシンも目に見えないので気にしなくていいのかもしれません。本当に地球環境を保全していかなければならないと考えるのであれば京都市が紙ごみを減らす仕組みを急いで作られることをお勧めいたします。
古新聞、古雑誌、段ボール、等の古紙はゴミの集荷ルートにのれば「焼却される紙ごみ」になり、私ども業界のルートに乗れば「製紙の原料」に生まれ変わります。ひ弱な民間のリサイクル意識にのみ頼るのではなく、京都市の行政が現在の啓蒙行政だけでなく、現実に汗を流して、ごみ減量のための古紙リサイクルシステムをつくる必要があると考えています。沢山の費用は不要です。工夫できることは沢山あると考えます。市民一人一人が紙ごみを減らそうと真剣に考えるようになる仕組みを作ればよいと思います。それには経済的に自分(市民一人一人)にメリットがあるという実感が必要です。その前段階として例えばごみ収集の有料化(指定袋の活用)、焼却場へのゴミ持込料の値上げする。そして次の段階としてその収益を古紙リサイクル団体への助成金として活用する等です。ごみの30%は紙ゴミと統計に示されています。そのうち半分(15%)を減らすことはそんなに難しいことではない思います。私どもの業界は古紙の集荷の機能と受け皿としての機能の両方を備えています。どうぞご活用ください。お役にたてると確信しております。 (2004年発表)
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